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地中海を思わせる街並みの秘密

白い壁と青い屋根のコントラストが美しい牙山(アサン)地中海村。吸い込まれるような美しい町並みというか村並みをみていて「調べたい」と思ったわけです。
しかし、ちょっと調べたぐらいでは出てこないわけです。
とはいえなぜ韓国にありながらこれほどまで地中海風の景色なのか。調べてみました。
ギリシャのサントリーニとパルテノン、そしてフランスのプロバンスをモデルにして造られた地中海村は牙山の新しい観光地として脚光を浴びています。確かに白い壁と青い屋根は地中海っぽく、そもそも建物も韓国の要素はありません。ヨーロッパの建築といった感じですね。
ただこっちが知りたいのは、どうして地中海風の建物にしたのか。これが全く謎のままです。恐らく観光地化したいという狙いがあるのでしょう。甘川洞文化村のようにアートで町おこしをすることもある韓国です。そのあたりは国の施策としてやっている可能性も十二分にあります。
かつてはぶどう畑が広がる農村だった

待て待て!調べてみたら出てきたぞ。
地中海村のある牙山市(アサン)市は、今でこそ地中海風の建物が立ち並ぶ美しい町になっていますが、かつては農村でした。農家の方々が暮らすぶどう畑だったそうです。
そこに2000年、Galaxyなどのスマホでおなじみサムスン電子が液晶モニターの工場と産業団地を建設しました。機械化によって村が良くも悪くも変わってしまったわけです。
それで困ったのが住人です。住むところを奪われてしまったため、故郷を去らなければならなくなってしまいました。ちなみに牙山市は韓国の北西部にあります。ソウルからKTXで約30分ほどです。
故郷を奪われた農村の人々もそのまま町を出るわけにはいきません。そこで組合を作り対策を練りました。その時、折衷案として出てきたのが産業団地のそばに新しい町を作ることです。
農村としての仕事が無くなってしまった収入面をどうしたのか。新しい街として建設された建物の1階をテナントにして2階以上を住居にするというアイデアが採用されました。1階のテナントに入るお店の賃貸料は住民が収入として得られるというものですね。
確かにこれならぶどうの栽培をしなくても生計が成り立ちそうですが、問題は1階の店舗にどうやってお客を呼び込むのか。ってことは街に人が流入する仕組みを作らないといけないわけです。お店にお客さんが来ないですからね。
考えに考えた末、住民たちから生まれたアイデアが観光地化することでした。そのために選ばれたのが地中海風の町並みにすること。
なるほど。街全体をデザインすることで、観光客を呼び込もうとしたわけです。フランスのプロバンス、ギリシャのパルテノン神殿、サントリーニをモチーフにした建物にするため、実際に地中海沿岸の視察も行っています。
ぶどう農家の人々が自分たちの故郷を守るために、海を渡って街づくりをするという行動力はすごいパワーです。
視察の結果、完成した建物の1階にはカフェ、食堂、ショップ。2階にはゲストハウスが作られた建物もあり、3階が住居となります。住民たちがここまでガッツリ街づくりの参加しているのは珍しいのではないでしょうか。日本だとサムスン電子の工業化のようなことがあっても、結構やられたまんまになりがちという印象があります。
町の名前に込められた理由

牙山地中海村の入り口には「BLUE CRYSTAL VILLAGE」というゲートが建っています。地中海っぽいイメージの名前だなーという風に思いますが、実はこの名前にも理由がありました。
BLUEは、この町にやってきたサムスン電子のシンボルカラーである青。CRYSTALの「C」の文字は、液晶モニター工場=LCDのCを意味するのだとか。VILLAGEは当然「村」ですから、サムスン電子の液晶モニター工場がある村という意味を町の入口に掲げているわけです。
住民とサムスン電子側が和解していることを意味していますが、なかなか意味の深い言葉です。英語で書かれているから中和される部分が大きいですね。

夜景もキレイで写真が映えるようなライティングもされています。どこで写真を撮影してもフォトジェニックな写真が撮れそうですね。
韓国で最も美しいと言われる大聖堂

牙山地中海村から電車で1時間15分ほどのところには、1890年に建てられた貢税里聖堂(コンセリソンダン)があります。
この聖堂は、120年の伝統を誇る歴史的建造物で、指定文化財であり、2005年には韓国観光公社(62年に設立された歴史のある公社)が選ぶ韓国を代表する一番美しい聖堂に指定されています。
2014年には当時のローマ法王が訪れた場所としても話題になりました。聖堂の内部は、ゴシック様式で建設されていて、フランス人の神父と中国人の技術者によって建設されました。赤レンガが美しいです。内部も公開しているので見ることができます。
貢税里聖堂の外には樹齢約350年、国家が保護している樹木があります。
韓国ドラマや映画のロケ地としても有名で、これまで70作品以上はこの場所で撮影されています。作品目をあげると「エンジェルアイズ」「美男(イケメン)ですね」「アイリス2」「ブラザー・フッド」など挙げだしたらキリがないほど。
牙山地中海村へのアクセス

企業の工業化の波もアイデアと行動力で乗り越えた町、牙山地中海村へのアクセスです。
①ソウルメトロ1号線 または KTX「牙山駅」下車(35分ほど)
②777番のバスに乗車。トラフェリバス停遺留所で下車
③約40分で到着(運行間隔 40〜50分)
④始発6:00 / 最終20:25(1日30便運行)
■タクシー
①天安牙山駅からタクシー乗車
②ドライバーに「アサン チチュウへマウル」といえばOK
③料金は約10000ウォン(1000円ほど)
※天安牙山駅と牙山駅は徒歩で行けます。
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