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大量のおむつとデング熱に四苦八苦

これは35歳のフリーライターが、3歳の娘と父娘二人旅を綴ったノンフィクションである…。
出発の数日前、エクスペディアで予約した航空券を確認していたら驚いた。行きの便で、3歳の娘と席が離れ離れなのだ。LCC(エアアジアX)とはいえ、予約時は年齢を記入する。3歳と入力しても隣同士の席にはならない。いきなり洗礼を受けた。
慌ててお金を払い座席の交換。約3000円を追加し、隣同士にした。旅立つ前からハプニングが始まっている。でもこのハプニングがあるからこそ旅はやめられない。
この日はもう1つ慌てたことがあった。それはデング熱だ。知人からバリ島へ行った際、蚊に刺されデング熱になり大変だったと聞かされた。デング熱…。聞いたことはあったが全く想定をしていなかった。
慌ててデング熱対策の殺虫剤を調べるが、よく考えると機内にスプレーは持ち込めない。それでも調べる。すると割と強めの殺虫成分が付着したシートが販売していることがわかった。
「天使のスキンベープ 虫よけシートプレミアム」と言い、子どもの皮膚にも優しく、一般的な虫除けより効果があるとのこと。すぐにネットで購入した。これで準備万端…と言い聞かせた。
出発まで1週間を切っているにもかかわらずこれだけ荒れている。実はもう1つある。
分かっていたことだが、3歳の娘はまだおむつが完全に取れていない。そのためラオスに持っていくバックパックの半分が30枚のおむつで埋まってしまった。おかげで私の服は2泊5日だというのに1着しか入っていない。あとは全部現地で買おうと思う。
何か忘れている気がするがこれで旅の準備はバッチリ…なはず。さあ、旅の始まりだ。
3歳の娘と父娘二人旅、はじまりはラオス

「えっ!?ラオス?しかも3歳の子どもと!?」
職場の同僚からほぼ100発100中で言われた言葉だ。ただこの先に続く言葉には2タイプあった。子どものいない人は「面白そうですね!」子育て経験のある人は「3歳と海外二人旅なんて正気とは思えない」…である。
ごもっともだと思う。私も子どもが生まれる前は小さい子と旅行だなんて危ないと思っていたし、リスクの方が多いと考えていた。妻が妊娠してからもそうだ。夫婦揃って旅行好きだが、子どもへのリスクを考えて旅行を躊躇していた。
旅行には行きたい。特に海外旅行をしたい。しかし子どもが小さいとおむつを持っていくだけでも大変だ。なにより旅行を自由に楽しむことができない。
世の中にはそうしたある種の固定観念があるが、ふと疑問に思った。何事もやってみなきゃ分からない。何より何が起こるか分からないという不確実性が旅のスパイスとなる。そうした気持ちが奮い立ち、リスクを考えず行動をすることにした。
なぜラオスなのかは至ってシンプル。私自身が行ったことのない国に行きたかったからというのが大きい。それに韓国や台湾といった旅行がしやすい国に3歳の子どもと旅行をしても意外性がなくて面白くない。行くなら何が起こるか予想できない国。それと仕事のスケジュールを考えて週末に行ける国。結局、金曜の夜〜火曜の朝までと週末をはみ出してしまったが2泊5日のラオス旅行となった。
「虫がこわい!」と泣く娘で食事はカップ麺

タイでの10時間トランジットを経て、ようやくたどり着いたラオス。ホテルでチェックインを済ませたら早めの夕食。9月の東南アジアの太陽は、肌をヒリヒリと照りつける。
日差しに照らされながら、メコン川に向かって散歩をすると、何軒もカフェが並んでいた。ラオスは元々フランス領だったこともあるのか、首都のビエンチャンは、欧米からの観光客向けのようなカフェが目立つ。食事をすることにした。
サンドイッチ、東南アジアのチャーハン、ミートソースとどれも安く美味しい。しかし娘は全く食べない。好き嫌いがあるからではない。飛び回っているハエが怖かったのだ。「むしこわい〜!チックン(刺)されちゃう〜」と大号泣。店員さん大爆笑。



(Danno’s coffee shopで食事。期待していなかったが美味しかった )
お店のご厚意で比較的、ハエの少ない席に替えてもらったがそれでもダメで二人分の料理をたった1人で、それも超スピードで食べ、虫のいないところへ戻る羽目になった(涙)
翌日、朝食をホテルのビュッフェにしようと娘に話すと「やだ〜!いかない〜」と駄々をこねる。近所のコンビニのような商店で買ったオレンジを食べるからビッフェには行かないというのだ。困った。
娘はオレンジでよくても私はきちんと食事を取りたい。町場のレストランやカフェでは娘が嫌がることは分かっていたからこそのホテルビッフェである。
何度も説得を試みたが全然ダメ。困り果ててなぜビッフェはダメなのかを聞いてみたところ「むしいるもん。チックンされちゃう〜」とのこと。食事を取る場所=虫がいるとなってしまったようだ。というか、ラオスだぞ、虫はいて当たり前だ。
結局、娘は私の説得に応じることなくビッフェは断念。私はコンビニへ行って娘が食べるようのフルーツと自分用の謎のカップ麺を購入。虫のいないホテルの部屋で食事をすることにした。別にマズくないが雰囲気がね・・・
降りられない観覧車、人力すぎる恐怖の遊園地

(ナイトマーケットの観覧車。ビル3階ぐらいの高さしかない)
「地球の歩き方」を読んでいたら、メコン川沿いでナイトマーケットが開催されていることを知った。ナイトマーケットと言いつつ、夕方から開いていて露店に加えて子ども向けの遊園地もあるという。
これは娘が楽しめること間違いなしと思い、虫のことは隠してホテルから連れ出す。トゥクトゥクにのって数十分。ナイトマーケットに到着。日本にあるお祭りの露店のような店が数え切れないぐらい並ぶ中、川沿いに遊園地があった。
アメリカの映画で移動式の遊園地を目にするがあんな感じだ。ただこちらの場合は常設のようだが。
その中でひと際目に付いたのが観覧車。日本のものよりもかなり小さい。3分の1,いや4分の1ぐらいだろうか。オンボロでいつ壊れても不思議ではない雰囲気がプンプンと出ている。しかし、この観覧車は日本にはまだ来ていない。(というか来ない)
フォーもナシゴレンは日本でも食べることが出来るが、B級の観覧車に乗れるチャンスはラオスに来ないときっとない。そう考えて…いや、自分に言い聞かせて娘と一緒に乗ってみた。
値段は1万キープ(約120円)で、ゴンドラのサイズは大人1人でぎゅうぎゅう。とにかく小さい。娘と顔の距離が近い。ワクワクしながら動き出すのを待っていると、すぐに観覧車は回り始めた。1周30秒ぐらいだろうか。あっという間に何周したのか分からないぐらい時間がたった。3分、5分・・・8分。
観覧車は一向に止まる気配を見せない。娘は大きな声で「おりたいー!」と叫ぶ。しかし、現地の人々しかいないこの場所で、日本語の「おりたい」は伝わらない。
気がつけば時計は10分を過ぎていた。新手の拷問か!?一向に止まる気配はないし、係の人(らしき人)も近くにいない。気がつけば乗車開始から15分が過ぎていた。もう観覧車の頂上から見るメコン川の夕景も見飽きた。娘もあくびを始めた。助けてくれ。

すると頂上付近でゴンドラが止まった。なるほど。地上付近で止まるわけではなく、こうして一度止めてからゆっくり下ろすのか。そう考えた。
・・・が、再び観覧車は元気よく回り始めた。「おりたい」から「かえりたい」の表情に変わる娘。ふと後ろを振り返ると、別の家族が観覧車に乗っていた。
そうか、一旦止まったのは別のお客さんが乗るのを待っていたのか。
結局、私たち父娘の乗った観覧車は22分間回り続けた。もうあの檻(ゴンドラ)から出られないと思った。係の人(らしき人)に必死に合図をして降りることが出来た。きっと言わなければ一生乗っていられたのだろう。
ちなみにそのあと娘が乗った円状に敷かれたレールの上を走る車のアトラクションは10分間、娘をのせてぐるぐるぐるぐると回っていた。

最初は楽しんでいた娘の顔が次第に曇り始め、5分を過ぎた頃から「おしまいにするー!」「もうかえるー」と叫んでいた。担当のラオス人は満足気な顔をしていた。
他にも娘が急に寝落ちしたので芝生の上で昼寝したり、タイの空港で10時間トランジットをしたり、細かな出来事は色々あるが、2泊5日の旅はこんな感じだった。
この旅行記は、成田に向かう飛行機の中で5日間を振り返りながら書いている。3歳の娘と海外、それも東南アジアなんて危険という人もいると思うが、危険なトラブルは全くなかった。
もちろん手放しで安全というわけではないが、しっかり準備をして気をつけていれば大丈夫。何よりインターネットの普及で旅は驚くほど快適だった。
さあ、次は娘とどこへ行こうか。今からワクワクしている。
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